土壌と水の(見かけ上の)分配係数について

先週の月曜日は、放射性セシウムに関する環境動態・管理保管に関する国際WSに少しだけ参加しました。その時に水中の放射性セシウムの分配係数に関する議論がでたので、備忘録を少しだけ。

土壌分野のKd

僕の主分野である土壌汚染の分野では、固相と液相の汚染物質の分配係数として、「Kd」を使います。

土壌の場合、Kdは、汚染物質を濃度を変えて添加したバッチ試験*1や、カラム試験(カラムの場合は、遅延係数)によって推定されます。

算定式:
土壌に吸着した対象物質濃度/平衡溶液中の対象物質濃度

得られたKdは線形もしくはフロインドリッヒ型、ラングミュア型に同定され、パラメータ化されます。これらの数値は主にシミュレーションに使われたり、吸着層等の設計にも関わってきます。
これらの値は、ある決まった系で算定する値なので、試験系が同じであれば、同じ値になります。

水でのKd

一方、水中の放射性セシウムも固相(SS等への吸着量)と液相(溶存態)に分配しています。

これらの比については、その瞬間の固相と液相の分配を示していますが、平衡に達しているとは限りません。また、固液比も、前述の試験系とは大きく異る値になります。

また、河川水においては共存イオン濃度やpHが場所によって異なることから、同じ濃度、同じ性状のSSが存在していたとしても、同じKdになるとは限りません。特に放射性セシウムの土壌への吸着能は、カリウムイオン、アンモニウムイオン等により大きく影響をうけます。

つまり、同じ性状のSSであれば、同一の値が得られるのではなく、状況によって異なる値になるのです。

そのため、これらの比として得られる値は、Kdとは呼ばず、「固相と液相の濃度の比」とか「見かけ上の分配係数:Apparent partition coefficient」などと呼ぶようです。(詳細はもっと深入りをする必要がありそうですが、保高の理解はこの辺りです。)

確かにその通り、と納得しました。取り扱いに注意をします。

*1:固液比は1:10出することが多い。振とう時間は予備試験で決定する事が多い。