論文公開「水田からの代かきと中干し時の放射性セシウムの流出率の測定と推定」

Journal of Environmental Radioactivityに、「Measurement and estimation of radiocesium discharge rate from paddy field during land preparation and mid-summer drainage」という表題の論文が掲載されました。

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概要

本論文は、6つの水田からにおける代かきと中干し時の放射性セシウムの流出量・率について実測するとともに、簡易的な推定式を提案して、一般的な水田からの放射性セシウムの流出率を推定した論文です。


調査させて頂いた水田のひとつ

昨年まで産総研に在籍した宮津さん(現農工研)が第一著者、保高が責任著者です。

背景

これまでは濁度計等を用いた水田からの放射性セシウムの流出量の推定に関する研究はありましたが、流出量に対する影響が大きい出水初期の放射性セシウム流出について、細かく取られたデータはありませんでした。また、条件が異なる水田において同様の調査をされたこともありませんでした。

方法

本研究では上記の課題を解決するために、6つの水田で代かき・中干しの出水時の出水初期に約1分ごとに水を採水し、懸濁物質濃度と放射性セシウム量を測定するとともに、水の流出量を測定することで、出水初期の流出特性を正確に捉えることができました。


設置させて頂いた排水こう


水田から流出する代かき排水


サンプル

結果

実測をした結果、6つの水田において、放射性セシウムの沈着量に対する代かき時の放射性セシウムの流出率は0.003-0.028%、中干し次の流出率は、 0.001-0.011%と算定されました。

また、沈着量と代かき・中干し時の土砂流出量から放射性セシウムの流出量を推定する式を提案し、特に土砂流出量が重要なファクターであることを示しました。さらに、既往文献の土砂流出量と本論文の土砂流出料を比較し、これらの数値が一般的な日本の水田の範囲であることを示しました。

水田からの放射性セシウムの流出率が低いことは既往文献でも知られていましたが、出水初期の詳細なデータ取得、さらに簡易式の提案により、0.001-0.028%という流出率が一般的な日本の水田での流出率としても適用可能なことを示しました。

御礼

現地調査に協力を頂きました自治体の皆様を含めた関係者の皆様、ありがとうございました。宮津さん、共著者の皆様、おつかれまでした。
本研究は、保高が代表を務める、科研費基盤A(研究課題番号:26241023)「除染・帰還を見据えた地域別の放射性Cs流出特性評価とリスク管理戦略の構築」の補助を受けて実施されました。ここに記して感謝します。

Miyazu, S., Yasutaka, T. Yoshikawa N,, Tamaki, S., Nakajima, K., Sato, I., Nonaka, M., Harada, N.(2016). Measurement and estimation of radiocesium discharge rate from paddy field during land preparation and mid-summer drainage.Journal of Environmental Radioactivity.155–156, 23–30. doi:10.1016/j.jenvrad.2016.01.013