論文が受理・公開されました.
保高がファーストの論文がRadioprotection(IF0.490)に受理・公開されました。
「Dialogue, radiation measurements and other collaborative practices by experts and residents in the former evacuation areas of Fukushima: A case study in Yamakiya District, Kawamata Town(福島県の旧避難地域における専門家と住民による対話、放射線測定などの協働実践に関する研究~山木屋郡川俣町の事例に基づいて~)」
T.Yasutaka,Y.kanai ,M. Kurihara, T. Kobayashi, A. Kondoh, T. Takahashi and Y. Kuroda(2020),Radioprotection, 55(3), 215–224,
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概要筆者らは、福島県川俣町山木屋地区で、震災後の9年間、環境放射能に関する研究や帰還後の山木屋地区の住民と外部の人の双方向型学習活動を連携して実施してきました。
震災後の9年間の活動における研究者と地元住民との協働、ニーズや関係性の変化、また、これらの活動がもたらした地元住民への影響について整理をするとともに、大規模環境災害における研究者と地元住民の関係性のあり方について考察をしています。
研究者と地域住民の対話や活動の変化
著者らは、山木屋で河川や森林、農地中の放射性セシウムや個人線量について調査し、その結果を住民に報告する報告会を2012年から毎年開催していました。当初は、専門家から環境調査に関する結果を「一方的」な伝達する住民説明会型の形式をとっていましたが、研究成果と住民側のニーズにギャップがありました。
これを改善するため、第2段階では、住民のニーズを知るところが重要との視点で、専門家と住民の「双方向」の対話を重視した形へと変化をさせました。また、避難指示解除後の第3段階においては、「放射線」への特化から「暮らし」全体を包括する広い範囲へと対話や活動(双方向型学習プログラム「山木屋学校」)へと範囲を広げていきました。「山木屋学校」は29回開催され、国内外から延べ500人以上の方が参加をしております。
本研究ではこれらの関係性の変化を双方向性と住民の関心・懸念の2つの軸で整理をするとともに、これらの活動に対して地元の住民の方にどのようなメリットがあったのかを整理しております。
図 山木屋地区における参画住民の懸念と専門家からのアプローチの変遷