Chemospher誌に論文掲載

Corresponding Authorの論文がChemosphreに掲載されました。

Development of a predictive model for lead, cadmium and fluorine soil&water partition coefficients using sparse multiple linear regression analysis, K Nakamura, T Yasutaka, T Kuwatani, T Komai, Chemosphere, Volume 186, November 2017, Pages 501-509.

概要

この論文では、土壌の物理的・化学的な性質の汚染物質の分配係数の関係について、スパースモデリング(sparse multiple linear regression analysis)という統計解析手法を用いて、関係性を評価をしています。
今回は、17種類の土壌を対処として、バッチ吸着試験で求めたフッ素、鉛、カドミウムのフロインドリッヒ型の吸着のKとnに対して、土壌の物理化学性としてCEC、粒度分布、比表面積、TC、強熱減量等の各種パラメータとの関係性を評価し、予測式を適用する、という研究です。東北大の中村さんが産総研にいた時に実施された実験結果をベースに、スパースモデリングを適用しました。

特徴

分配係数は、汚染土壌から溶出した汚染物質の物質移動評価において、もっとも重要なパラメータの一つであり、粒度分布や有機物含有量、pHによって大きな影響を受けます。
この分配係数の情報に関しては、以下の2つの課題がありました。

  1. 日本の土壌に対して重金属等の分配係数に関するデータが少ない、と言う課題。論文だけでなく、学会発表レベルにおいてもかなり限定的なのです。
  2. 土壌の物理化学性等を用いた分配係数の予測モデルの構築(国内・海外で幾つかの論文がありますが、日本の土壌に対しては殆どなかった。)

本論文では、日本で採取した17土壌の分配係数を実験で求め、物理化学性とともにデータを公開しており、分配係数に関する基盤データの補強ができていると考えます。
特に、カドミウム、鉛については、従来の知見と一致してpHにより強い影響を受けることが、スパースモデリングの検討結果からも示されました。一方、フッ素はpHとは強い関係性がないことも示されています。

また、予測モデルについても、従来型の重回帰による予測式と比較して、スパースモデリングを適用することで、より良い精度が得られました。しかしながら、まだ試験を実施した土壌数が少ないことも含めて、今回提示した予測モデルでなんとかなる、というレベルではありませんが、新たな方法論を示したところが新規性です。

今後は、フロインドリッヒ型以外の形への適用や、分配係数のデータベース作成等を実施していきたいと考えております。

参考情報

今回の論文は、投稿から受理・出版までが4ヶ月と短かったです。

  1. Submitted(投稿日):26 March 2017,
  2. Editor Decision,Major Revision(要修正):28 May 2017
  3. Revised(修正稿投稿日): 6 July 2017,
  4. Accepted(受理日): 25 July 2017
  5. Available online(公開日): 26 July 2017