プレスリリースと論文公開(海水中の放射性セシウムの迅速濃縮・モニタリング法)

本日、海水中の低濃度放射性セシウムを迅速にモニタリングというプレスリリースをさせて頂きました。(2016/02/06一部追記)

論文は、2016年1月28日にJournal of Nuclear Science and Technology誌電子版に掲載されています。

Tetsuo Yasutaka*, Susumu Miyazu, Yoshihiko Kondo, Hideki Tsuji, Koichi Arita, Seiji Hayashi, Akira Takahashi, Tohru Kawamoto & Michio Aoyama (2016), Development of a copper-substituted, Prussian blue-impregnated, nonwoven cartridge filter to rapidly measure radiocesium concentration in seawater,Journal of Nuclear Science and Technology, DOI:10.1080/00223131.2015.1135302

この論文のポイント

海水中の低濃度の放射性セシウムのモニタリングにおいては、20L〜100Lの海水の中の放射性セシウムを従来、リンモリブデンアンモニウム共沈法などで6時間から数日かけて濃縮する必要でありました。
今回、我々が開発した銅置換体プルシアンブルー担持不織布カートリッジを活用することで、20Lの海水中の放射性セシウムを40分で濃縮が可能になり、前処理時間の大幅な短縮が可能になります。
淡水に適用していた懸濁物質回収カートリッジと合わせて使用することで、現地で、海水中の懸濁態・溶存態放射性セシウムの分離・濃縮が可能になります。
さらに、現地(港・船等)での濃縮も可能なので、水の持ち帰りが不要、というメリットも有ります。


背景

海水中の放射性セシウム濃度は東京電力福島第一原子力発電所近傍を除いて、その濃度は多くのエリアで数 mBq/L〜20 mBq/Lと低下してきています。
安全性の観点からは十分低い濃度ですが、長期動態評価の観点から、モニタリングの省力化、低コスト化、迅速化は課題でした。

これらの低濃度の海水中の放射性セシウム濃度のモニタリングにおいて、迅速化、省力化、低コスト化が可能になります。

共著者の皆様、ありがとうございました。
また、海水に関する研究開発は、国立研究開発法人 科学技術振興機構JST)の研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム(実用化タイプ)(平成24〜平成25年度))、独立行政法人 日本学術振興会の科学研究費助成事業(課題番号:26241023)による支援を受けました。ありがとうございました。

プレスリリースを引用すると以下のようになります。

現在の福島県近傍の海水中の溶存態放射性Csは1 Lあたり0.01ベクレル(Bq)未満と極めて低い。そのため、海水中の放射性Cs濃度の測定には、まず20〜100 Lの水を汲み上げ、6時間〜数日程度かけて、水中の懸濁物質の除去や、リンモリブデンアンモニウム共沈法等を用いて溶存態放射性Csを濃縮するといった前処理が必要であった。今回開発したCu-Cは、海水でも高い回収率を示し、毎分0.5 Lで海水を通過させると90 %以上の溶存態放射性Csを回収できる。その結果、20 Lの海水中に含まれる放射性Csを僅か40分で濃縮でき、前処理時間を大幅に短縮できる。また、Cu-Cは淡水中の放射性Csの回収性能も、従来型の亜鉛置換体プルシアンブルーを使った不織布カートリッジ(Zn-C)を大きく上回る性能を示す。本技術の活用により、海水中の放射性Cs濃度の測定、さらには長期的な環境への影響評価に大きく貢献することが期待される。